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ケンカ十段と呼ばれた男 芦原英幸/The Way of Sabaki: the Secret of Teachings of Hideyuki Ashihara

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ケンカ十段と呼ばれた男芦原英幸

※写真の著作権はすべて筆者にあります。

 ベストセラーの紹介

「ケンカ十段と呼ばれた男芦原英幸」

 松宮康生著

 日貿出版社刊

 

 

ケンカ十段と呼ばれた天才武道家の生涯

この物語は、日本の武道史に金字塔を打ち立てた天才空手家芦原英幸(あしはらひでゆき)氏の人生を詳細にトレースしたドキュメント作品である。アマゾンの人気ランキングでも1位を獲得している。芦原は、元極真会館四国支部長を務め、関西より西の地域中国地方から四国、九州の全エリアに極真会館を広めた功労者であった。その活躍は、映画や漫画雑誌でも紹介され、爆発的な人気を誇った。芦原は、劇画原作者として「巨人の星」「あしたのジョー」などの人気作品を生み出した梶原一騎原作の「空手バカ一代」においてその人気を不動のものにしていった。またその作品で作画を担当した劇画家影丸穣也は、芦原の生涯の友人の一人でもあった。

 

この作品では、芦原英幸という天才武道家の幼少期からのエピソードなどを現地取材で何年もかけていねいに書かれている。芦原の親族や小学校、中学校の担任教師、さらに友人や弟子など取材可能なほとんどの人に実際に会って話を聞いている。芦原という一人の天才がどのように生まれ育っていったのかを事細かに書かれている。芦原が、戦後フルコンタクト空手界のドンとなった大山倍達のもといかなる役割を果たし、さらに何が理由で極真会館を永久除名となったのかまで言及している。

 

サバキはなぜ生まれたのか?

今や全世界で学ばれている芦原の創造した空手技術「サバキ」。著者は、芦原英幸に約22年もの間学んだ人物である。その彼が、芦原に長年に渡り学んできた空手技術についても深く考察している。著者は、芦原の「手裏剣投げ」や「サバキ」を生み出すもとになったのは、幼少期に経験した「ねんがり」という遊びに起因しているのではないかと考えている。今の日本ではもうすでに忘れ去られてしまった子供たちの「遊び」が、身体能力やカンと言った能力を発達させたのかもしれない。現在のコンピュータ世代の子供たちからは想像もできない時代が存在していたことが、このドキュメンタリーでも語られる。芦原は、相手の力を利用し、より正確に相手を制圧する技術として「サバキ」という技術を生み出す。それは、従来の相手が打つから打ち返すという空手とは異なる技術であった。相手から打たれず、安全なポジション(相手の死角)から攻撃をくわえる技術であった。芦原のこうした合理性重視の技術は、当時の直接打撃制が盛んであった時代には馴染まなかったが、その技術の高さは海外の警察機構や特殊部隊の人々から高く評価されることになる。この本では、そうした部分についても海外取材などを行い書かれている。

 

Aバトンは甦える!

芦原は、その晩年「特殊警棒」別名「Aバトン」の開発に力を注いだ。このAバトンは一部の警察や警備保障会社で現在使用されている警棒である。扱いやすく、女性でも暴漢を一瞬にして制圧することが可能になる大変すぐれた警棒である。その評価は年々高くなっており、海外の警察などからの注文も多く寄せられていると聞く。この本では、なぜ芦原が、Aバトンという「特殊警棒」を開発するに至ったのか?さらにそのためにはどんな苦労があったかなどについても触れている。本の最初の数ページには、芦原の珍しい写真とともに芦原自身が書いたメモや「Aバトン」のオフィシャルな設計図などが写真で紹介されている。さらに巻末には、芦原の年譜や芦原自身のことが掲載された雑誌や書籍類の一覧なども載っており、この1冊で芦原英幸という天才の秘密を十二分に知ることができるだろう。

 

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Aバトン試作品

※写真の著作権は筆者にあります。